韓国の医療ツーリズム

研究員コラム

コロナ禍を抜け、医療ツーリズムが再び注目されつつあるらしい。医療ツーリズムとは外国へ渡航し、その国で治療や健診を受けることである。自国よりも医療水準の高い国での受診を求めることや、安価での医療サービス、自国で行われていない医療サービスを求めて渡航するなど、目的はさまざまだという。特にアジア諸国では、政府主導で医療ツーリズム受け入れの施策が行われており、勢いがあると言われている。

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韓国は、コロナ禍前から政府主導で医療ツーリズム振興に取り組んでおり、最新の医療機器、IT医療技術、美容整形技術、韓国の伝統医学である韓方などで外国人患者を惹きつけてきた。他国と同様、コロナ禍で大きな影響を受けたものの、現在改めて需要が拡大しているという。韓国の医療ツーリズムについて調査するなかで、医療ツーリズムに特化した観光案内センターがあることを知った。韓国が医療ツーリズムを積極的に推進し、アピールしようとしていることがよく分かる。

韓国観光公社は、ソウル、仁川、釜山に医療ツーリズムの案内センターを設置している。仁川では空港内に「メディカルツーリズム・サポートセンター」として設置し、空港に降り立つ観光客に向け、ソウルのクリニックや人間ドックなどのパンフレットの配布や相談の受付を行っている。さらに、ソウルの江南区は、区内の医療ツーリズムの案内センターとして、カンナム・メディカル・ツアー・センター新しいウィンドウで開きますを設置している。この施設自体は2013年にオープンしたものだが、コロナ禍の休業を経て、2023年6月に面積を拡張し、改装オープンした。

施設内では、英語、中国語、日本語、ロシア語での1対1のコンサルテーション、医療アポイントメントサービス、送迎サービスや通訳など、外国人患者へのサービスを提供。このほか、無料で肌診断、体成分分析、頭皮ケア、ドライアイ治療などの最先端の医療技術の体験コーナーも設けている。メイク講座やヨガ体験、K-カルチャーイベントなど、イベントも積極的に行っているようだ。

シンガポール、マレーシア、タイなど、アジア諸国は外国人患者に対応することを考慮した病院の建設や健診パッケージの提供、外国人患者へのコンサルテーションサービスの充実など、医療ツーリズムを見据えた取り組みが行われている。日本の高度な医療に対し、外国人からのニーズは高いと言われている。医療関連の規制や手続きなどの違いから、諸外国の例をそのまま取り入れることはできないと思うが、諸外国が医療ツーリズムに積極的である状況とその取り組みについて把握しておきたいと思う。

国際文化観光研究室 西園記代子